「直視下剥離法」の技術的特徴を説明します。
(1)アポクリン腺の摘出方法
従来の摘出方法では、アポクリン腺を取る際に、よけいな皮膚や脂肪層も同時に取れてしまったり、逆に肝心のアポクリン腺が残ってしまうことがしばしばでした。
そこで私は、摘出の前処置として、皮膚および脂肪層と、アポクリン腺を丁寧に「剥離する」方法を考案しました。脂肪層とアポクリン腺の層は薄い膜で区切られているため、この層を上手に剥離すると出血も少なく、きれいに剥離できます。皮膚を反転するとアポクリン腺の層がきれいに露出するので、今度は皮膚とアポクリン腺層の剥離を行います。
アポクリン腺は腺体と腺根からなります。腺体の一部はやわらかいので機械で吸引できる場合がありますが、腺根は硬い真皮層に入り込んでいるため、鋭利なハサミによって剥離しなければ完全に摘出できません。腺根が一部でも残ると、将来アポクリン腺が再生再発します。腺根を含んだ真皮層を均等に削除する剥離法であれば、同時にエクリン腺の一部まで削除でき、減汗効果をいっそう高めることができます(多汗の程度が大きい患者さんの場合は、真皮層を厚めに削除し、削除する面積も少し大きくします)。
剥離法の長所はこれだけではありません。
剥離時に皮脂腺も自然に浮き上がってくるため、そのすべてを摘出することも可能です。皮下の血管網は脂肪層に多いのですが、剥離してから摘出を行えば、出血も最小限に抑えられます。たとえ出血しても、出血点がはっきり確認できるため、止血がスムーズにできます。術後の血腫形成の心配がないため、入院して血腫ができているか確かめる必要もありません。
(2)切開部位
切開部位は図のようになります。これはアポクリン腺の存在部位と皮膚の反転度を考慮して決められたもので、このような切開部位をとることで、従来の方法では取り残しやすかった中枢側のアポクリン腺も完全に除去できるようになりました。また、ワキの下のシワに沿って切開するため、術後の傷痕はやがてシワにまぎれ、さほど目立たなくなります。
(3)切開範囲
切開範囲を患者さんの皮膚の伸展度に合わせて変えるようにしました。たとえば、伸びやすい皮膚の患者さん、ヤセ型の患者さんは切開範囲が狭くなります。
(4)体位の変換
ここでいう体位の変換とは、手術中、腕の位置を作業が進むに合わせて変えていくことです。患者の腕を伸ばしたままアポクリン腺を剥離していくと、末梢側(指先に近い側)に進むにつれて皮膚が緊張し、剥離がしにくくなります。しかし、このときだんだん腕を曲げていくと、緊張がなくなり、皮膚がひっくり返しやすくなるのです。
手術中のワキの下の皮膚は、アポクリン腺が剥離されるにつれ、驚くほどよく伸びるものです。この性質を利用した改良です。
(5)クーパー(ハサミ)の改良
剥離摘出作業には、従来のクーパーより何十倍も切れ味のよいスウェーデン製のスーパーカットと、私が考案した「五味式超強湾クーパー」を使います。五味式クーパーは先端がほぼ直角に曲がっています。アポクリン腺は有毛部の中心では数の子のように集合しているので摘出しやすいのですが、周辺部、末端部にいくにつれ、しだいに散在するようになり、摘出しにくくなります。末端部(周辺部)のアポクリン腺は、これを使用しなければ完全には摘出できません。
(6)術後の圧迫固定法(タイオーバー法)の改良
手術が終わって切開部を縫合する際、皮膚を自然に生着させるため、タイオーバー法で圧迫固定を行ないます。しかし、これは皮膚の上にガーゼを乗せているだけの固定法なので、絶えず動く部位であるワキの下に用いると、十分な固定性が得られません。
そこで私は、図に示すように、タイオーバーをワキの下に埋め込む固定法を考案しました。これが「埋没式タイオーバー法」です。この固定法なら肩が動いてもガーゼはズレないので、術後すぐに仕事をしても(極端に腕を上下させる仕事でない限り)だいじょうぶです。
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