精神性発汗型多汗症、ワキガに効果
ボトックス治療とは?
近年、ボツリヌス毒素A(商品名ボトックス)を腋窩の皮下に注入する療法が注目されています。自律訓練法による多汗症治療はかなりの時間がかかりますので、もっと簡単に抑えたいというのであれば、この「ボトックス」の注射も選択肢のひとつです。
ボトックスが効くメカニズム
交感神経の末端で発汗を促進させているのが、アセチルコリンという伝達物質です。ボツリヌス毒素Aは、神経の末端に結合して、そこから分泌されるアセチルコリンの放出を阻害します。そのため、アセチルコリンを抑制するボツリヌス毒素の多汗症治療への応用が研究されました。
ボトックスの腋窩多汗症への応用は、どの程度の量を注入すると、副作用を生じない範囲で、どの程度の減汗効果があるのか、という基本的な医学的検証がまだなされていない分野でしたので、当クリニックでモニター期間を含め約2年間治験を行いました。結論を言いますと、ボトックスは私の想像以上の減汗効果がありました。
注射後約1週間後にお近くの方には検診に来ていただき、遠方の方には電話で経過報告をしていただいたのですが、7割くらいの人が「70%~80%程度減少した」と返答しています。中には「ほとんどかかなくなった」と答えた人もいました。「幾分減ったかな?」という程度の人も中にはいて、人により効果に差が見られますが、全体的には「満足できる」方法と断定してもよいでしょう。
効果のある人は、注射の翌日から効き始めるようです。だいたい3日目くらいから効果が現れる人が多いようです。
ボトックスは精神性発汗に効果がある
効果の持続期間については、従来、3~4カ月間くらいということでしたが、注射の部位の工夫で半年以上持続することもわかりました。理論的にはボトックスは半年くらいで交感神経末端からはずれて、体外に排泄されてしまいますので、その後は再び汗をかきはじめる「はず」です。
ところが、驚いたことに、この「はず」が来ない人がいたのです。 実際に、当クリニックの統計では、半数近くの人が6カ月を過ぎても汗が減少しているか、以前よりあきらかに少ないままだったのです。つまり1回の注射で多汗症が「治癒」する可能性もあるのです。
これは、ボトックスによる汗の減少という実体験を通じて、「また汗をかくのではないか」と汗を予想する不安が、「注射をすればいつでも汗は抑えられるのだ」という自信に変わったからです。そのような自信が、汗以外の何か違う価値へ意識を向かわせ、さらに予期不安が減少するという好循環をもたらしたのです。一種のロゴセラピー様の結果を招いたともいえるでしょう。
もちろん、これはすべての人に当てはまるわけではありません。内向的で物事にこだわる人は、物理的な効果期間がなくなると再び汗がでて、もう一度注射が必要となります。しかし、それでも前回より少ない量で同じ減汗効果が得られるようです。
また、これまで報告されていた腕の重量感やしびれ等の症状についても、注射の量と注射部位によりかなり改善されることがわかりました。皮下ではなく皮膚真皮下層に注入することで、より少ない量で大きい効果が期待できます。
ボトックスのワキガへの効果
ボトックス治療は、初期の頃はエクリン腺の汗のみに効果あると言われ、実際に精神性発汗型多汗には非常に効果がありました。その後、「ワキガ臭」に対しても、非常に効果的なことがわかってきたので、私のクリニックではボトックス治療を、精神性発汗だけでなく、ワキガの患者さんにも適応しています。また、ボトックスは手術のまだ適応にならない思春期前の子供の「ワキガの治療」としても非常に有効なことがわかってきましたので、子供のワキガの治療にも使用しています。
患者さん本人に対する安全性は確認されていますが、妊婦の胎児に対する安全性はまだ確立していませんので、半年先までに妊娠の可能性がある女性は、ボトックスの注射は避けて、出産してから治療を受けるのがよいでしょう。
完全予約制
土・日・祝日もカウンセリング・手術・ボトックス注射できます。
診療時間 10:00-17:30